
Recursive Picture
2015
この作品は、絵画が自らの価値を記述することで、その記述自体が作品内容となる再帰的な構造を持っています。 画面には「THIS PAINTING WORTH £5,000-.」という一文だけが置かれていますが、その言葉は単なる説明ではなく、作品そのものの一部であり、同時にその価値を規定しようとする宣言でもあります。 ここでは、絵画を評価する言葉が絵画の外側から与えられるのではなく、作品の内部に書き込まれています。 つまり、作品が自分自身について語り、その語りがまた作品の意味と価値を形成するという、自己参照のループが生まれています。 絵の内容と評価、対象と言語、作品と価格が分離されず、ひとつの閉じた構造として重なっている点がこの作品の核です。 黒い画面と最小限の文字だけによる構成は、視覚的な表現を極端に切り詰めることで、見る者の意識を「何が描かれているか」ではなく、「価値はどこで成立するのか」という問いへ向けさせます。 その結果、この作品は絵画であると同時に、絵画を取り巻く評価の仕組みそのものを内側から反射する装置になっています。 再帰とは、あるものが自分自身を含み込みながら成り立つ構造です。 この作品では、絵画が自らの価格を語り、その語りがまた絵画の価値の一部になることで、自己言及と価値形成が循環する、再帰的な絵画として成立しています。