
MULTIVERSE
2017
赤瀬川原平の宇宙の缶詰という作品があります。 カニ缶を食べて、綺麗に洗った後、内側に丁寧にはがしたラベルを張り直し、蓋をはんだで付け直したというものです。 それがなにを意味するかと言うと、宇宙を全てカニ缶に梱包したという事です。 実は今僕らの知っている宇宙は、赤瀬川原平によって一度梱包されているモノなのです。 壮大で、これ以上スケールの大きい作品はなかなか無いでしょう。なんせ全宇宙ですから。 この宇宙の缶詰という作品は、コンセプチュアルアートの中でも飛びぬけて良いと思います。壮大な宇宙に合わせて、高級なカニ缶にしたという本人の説明も良いですよね。なんせ面白い。 最近宇宙は複数あるとか色々聞きます。カニ缶が複数ある事で、多元宇宙も再現出来るという様な事を赤瀬川原平が書いてました。ただ、残ったカニ缶の中は何を表すのか?そこがこの作品に考える余地を残していて、奥行きというか余韻があります。 僕が宇宙を考える時に、一番面白いと思うのは、ビッグバンは真空の揺らぎから起こったいう所です。真空という無のところから何やら有が出てきたというのが不思議です。仏教で、空という概念がありますが、有は無と同時に成り立っているという様な考え方なので、空と真空の揺らぎは似ていると思います。 仮に有を1と表し、無を0と表せると思います。普通に考えても、何かが一つあるのは有だし無ければ0ですからね。 0と1のどちらかの値を得られるのが1ビットですが、0と1を同時に得られるというのが量子ビットだそうです。 量子力学にはこの状態を表す式があります。 真空の揺らぎ、宇宙の始まりはきっとこの量子ビットの様に無と有が同時に存在していたのでしょうね。 全ての宇宙はここから始まったのであれば、情報の最小単位に全てが内包されていたという事も考えられると思っています。 少し話は変わりますが、1と、0.9999...と永遠に9が終わらない少数は同じ事を表すそうです。 1というのをこの世の存在全てが"有る"という事を表す記号だと考えた場合、それは永遠に終わらない0.9999...であると言う事も出来る筈です。 有というのは観測出来るところまで何処までも細かく分けていけるのでしょう。 0.9という宇宙や、0.09という宇宙、0.009という宇宙、これらがすべて合わさったものが 有という概念で表されるのでしょう。 神道で八百万の神という概念がありますが、全てのものは神であるという考え方ですね。 同じ神という素材で出来てるなら、全ての存在は同じ、一つの塊("有" = 1 = 0.9999....)と考える事が出来ると思います。 で、無と有が同時に得られる量子ビットですが、有の部分に0.9999....を代入したら、 0と0.9999....が同時に得られるという事になると思います。 「永遠に複数の宇宙(神)が存在しているが、それは無と隣り合わせである。」 という概念を共有する為に、この絵を作りました。 あくまでも美術、哲学、宗教的にこの世の仕組みを考えたものなので(そのどれでもないデザイン的思考で得たアイデアですけど)、厳密に物理の法則を表せているとは自分でも思っていませんが、この絵が、何らかのざわめきを人に与えられればそれで成功だと考えています。 これが赤瀬川原平の宇宙の缶詰に対する僕の回答だと考えています。