
RSD SELECTION
2022
私がまとめたRSDのベスト集です。 TRACKLIST 1-Rob Smith - The Blue&Red Tapes Vol.1 - 20 Lesson from Grace 2-Smith & Mighty - Connected Sequences - 05 Evolve Dub 3-Smith & Mighty - Connected Sequences - 16 Casiover (Bonus Track) 4-Smith & Mighty - Connected Sequences - 04 Stupid Dope Rock 5-Rob Smith - A Double Album - 12 Question ft. Gaddiel 6-Smith & Mighty - Ashley Road Sessions 88-94 - 08 Dub Song 7-RSD - Kawakawa - 01 Sounds Like Old Friends ft Preddi 8-RSD - Across The Middle E.P. - 06 Southern Crux 9-Rob Smith - The Blue&Red Tapes Vol.1 - 16 Strong Rebel Beat 10-RSD - Kawakawa - 05 Cherry Dub 11-RSD - Good Energy (A Singles Collection) - Love of Jah Light 12-Rob Smith - The Blue&Red Tapes Vol.1 - 06 Dub in Crisis 13-Rob Smith - The Blue&Red Tapes Vol.1 - 13 Bass in Dream 14-RSD - Good Energy (A Singles Collection) - Koto 15-Rob Smith - A Double Album - 18 Life's Edge ft. Alice Perera & Tony Wrafter on Sax Rob Smith / RSD──“ブリストル・サウンド”を土台から作った人 ブリストルの音楽を語るとき、多くの人は Massive Attack や Portishead を思い浮かべると思います。けれど、そのさらに深い基礎部分にいる人物として外せないのが Rob Smith です。RSD はその Rob Smith の名義で、Resident Advisor でも実名が Rob Smith と記載され、Bandcamp でも “RSD Bristol, UK” とされています。 Rob Smith が重要なのは、単に古い世代のレジェンドだからではありません。彼は Smith & Mighty の中心人物として、1980年代からブリストルの現場で、ヒップホップのビート感、レゲエ/ダブの低音、ソウルの歌心、そしてサウンドシステム文化の空気を混ぜ合わせるような作り方を続けてきました。2024年のインタビューでも本人は、Ray Mighty と機材実験を重ねるなかで、ヒップホップのビートとレゲエのベースライン、クラシックなボーカルを軸に、自分たちが聴いて育ったソウル、レゲエ、パンク、ポップを溶かし込んでいったと語っています。 この感覚は、あとから「ブリストル・サウンド」と呼ばれるものの、かなり根っこの部分にあります。The Vinyl Factory は Smith & Mighty を、Massive Attack が大きく広まる以前からその土台を築き、UKダンスミュージックにベースの重心を持ち込んだ存在として位置づけています。2018年の Ashley Road Sessions 88–94 の解説でも、Smith & Mighty はブリストルの物語にとって不可欠であるだけでなく、ジャングルやダブステップを含む広い都市音楽/電子音楽の流れにまで影響を与えたと評されています。 実際、彼らの仕事はかなり具体的です。Smith & Mighty は Massive Attack の最初期シングル “Any Love” に関わり、さらに Fresh 4 “Wishing On A Star” のビートも手がけました。The Vinyl Factory はこの流れを、ブリストル発のベース・ミュージックが街の外へ届いていく決定的な局面として描いています。 さらに面白いのは、Rob Smith の影響力が「作品」だけで終わっていないことです。Ashley Road のスタジオは、Roni Size、Suv、Krust、DJ Die らが試行錯誤できる場所でもありました。つまり彼は、名曲を作っただけでなく、次の世代が育つための場そのものにも関わっていたわけです。ブリストルの音が連鎖的に広がっていった背景には、こういう見えにくい基盤づくりもありました。 その後、メジャーとの関係がうまくいかなかった時期を経て、Rob Smith は More Rockers Records を立ち上げ、そこから 『Bass Is Maternal』 へ進みます。さらに後年、Peverelist との会話をきっかけに、Punch Drunk から RSD(Rob Smith Dub) 名義で作品を発表するようになり、その一連のリリースはブリストルのダブステップ文脈でクラシック扱いされるようになりました。つまり RSD は過去の栄光の焼き直しではなく、Smith & Mighty 以来の感覚を、ダブステップ以降の低音文化へ接続した名義だと見るのが自然です。 この人のすごさは、ジャンルを“渡り歩いた”というより、低音の美学を持ったまま形だけを変え続けてきたところにあります。ジャングル、ダブ、ダブステップ、ブレイクビートと名前は変わっても、Rob Smith の中心にはずっとサウンドシステムの感覚がある。本人も近年のインタビューで、いまでも制作には “dub attitude” で向き合っていると話しており、流行に合わせるというより、自分の重心を保ったまま前へ進むタイプのアーティストだと分かります。 そして大事なのは、Rob Smith がいまも現在進行形だということです。Bandcamp では 2024年に 『The Blue & Red Tapes Vol.2』、2025年に 『Warm EP』 と 『Warm Pt.2』、さらに 2026年3月には “Bandcamp Sampler 4” も確認できます。『The Blue & Red Tapes Vol.2』では、長い年月にわたる未発表曲群を「ダブの態度」で束ねた、かなり私的で記憶的な作品として提示しており、昔の人ではなく、いまも更新し続けている人だと分かります。 日本との距離が近いのも、Rob Smith を日本で書く面白さのひとつです。Bandcamp の近作クレジットには “all of my Japanese family” への言及があり、Ashley Road Sessions の解説でも、彼が 日本の Rush や Zetai Mu から作品を出してきたことが触れられています。Mixmag Japan の2024年インタビューでも、日本との深いつながりが紹介されています。 だから、Rob Smith / RSD をひとことで言うなら、“ブリストル・サウンドの源流にいて、その低音の思想を現在まで持ち運んでいる人” だと思います。Massive Attack や Portishead の陰に隠れがちですが、ブリストルの音の骨格そのものを見たいなら、むしろこちらを先に聴いたほうが話が早いかもしれません。Rob Smith は、歴史の脇役というより、歴史の下にある基礎工事に近い存在です。 まず聴くなら Smith & Mighty – “Walk On” / “Anyone” 初期ブリストル・サウンドの輪郭が見える曲です。重い低音感覚とポップな歌の距離感が、すでに独特です。 Fresh 4 – “Wishing On A Star” Smith & Mighty の仕事が街の外へ届いた象徴的な1曲です。ブリストルがローカルな実験で終わらなかったことがよく分かります。 Smith & Mighty – Bass Is Maternal メジャー離脱後に自分たちの重心を取り戻した作品として重要です。後続世代が強く影響を受けた理由もここにあります。 RSD – “Corner Dub” RSD 名義の意味がすぐ分かる曲です。ブリストル的なダブ感覚が、ダブステップ以降のフォルムで鳴っています。 Rob Smith – The Blue & Red Tapes Vol.2 現在の Rob Smith を知るならここも大事です。未発表曲群を束ねた、記憶と時間のアルバムです。